失うものが無い弱さ

ふと思ったこと。既出かも。(こんなこと言って大丈夫かな…。)

ARCHIVES | KAZUMA IEIRI - Part 3255

「若い人は失うものが無いから強い」だとか、「若い人は失うものが無いからいいよねー」とか、これまで何度か言われてきたけどこれにはどういう意味があるのだろう?僕はこれまで全く同意できなかったし、何を意味するのかわからなかった。で、わからないなりに考えてみた。

そもそも、若いことは単に「経験が浅い」ということだけでは無いことがだんだんわかってきた。冒頭の、失うものが有るか、無いかということは仕事上の人間関係を作る上で最も重要である。少なくとも日本では。どういうことかというと、仕事の上では人と人とがお互いに仕事の成果を保証することで成り立つ関係である。よって、多くの場合、相手の信頼性を測ることからビジネスは始まる。
若い人とある程度年を取った人、例えば20代前半と30代後半の人ではどう印象が変わってくるか。この歳月がその人のスキルを上げている可能性が高いことは確かである。その上、日本の年功序列制度により会社での役職が上であればその人の価値としてはなおさら高くなる。
しかし、このとき余り意識されていない「失うものがあるかどうか」が、評価関数の中にどのように関係しているかに僕は興味を覚えた。

余談になるが、「背水の陣」という言葉がある。後ろに川があって逃げ場が無い軍隊が、敵軍に追い詰められたとき、後が無いことから軍に思い切りを付けてより戦力を高めるという戦術である。もしかすると深い意味がそこにはあるかもしれないが、ここでは文字通り単純に意味を捉えてみる。
背水の陣を敷いたとき、もし負けても失うものは自分だけである。しかし、もしこれと同時に、自分の子供や妻を亡くすことになるとしたらどうだろうか。背水で陣取っている場合ではない。

これと同じで、現代社会に生きる普通の人は、そもそも「背水の陣」のつもりでいる人がほとんどだと思う。一度失敗したら二度と這いあがれない。受験にしても就職にしても、結婚にしてもだ。時期を逃せば(一度負ければ)ずっと負け、という環境である。(本来はそうではないにしても、それくらいの意識でいるのなら同じこと)

話を戻すと、これを踏まえた上で「20代前半の大学生、失うものが何もない人」と「30代後半の子持ち既婚者」ではどちらの方が強いだろうか。どちらの方が仕事に対して前向きになれるだろうか。日本社会は信頼関係で成り立っているのだから、実際どうこうの話ではなく、感覚的にとらえてほしい。

別に、どちらがいいかとか、その格差を無くすべきとかとんちんかんなことを言っているわけではない。だけど、若い人を羨む(もしくは失うものが無い人を利用しようとしている)人は自分を良く振り返ってみたらいいと思う。そして、「失うものが無い弱さ」からも目をそらさないでほしい。